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米メルク(Merck & Co., Inc.)は2025年10月23日、筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者を対象に、抗PD-1抗体「キイトルーダ(KEYTRUDA)」および皮下注製剤「キイトルーダ クレックス(KEYTRUDA QLEX)」をそれぞれエンホルツマブ ベドチン(Padcev)との併用で使用する治療法について、米国食品医薬品局(FDA)が優先審査(Priority Review)を付与したと発表した。審査結果の目標期日(PDUFA)は2026年4月7日に設定されている。
- 【要点①】KEYTRUDA+Padcev併用がイベントフリー生存期間(EFS)を60%改善。
- 【要点②】全生存期間(OS)の死亡リスクを50%低減し、病理学的完全奏効率(pCR)を48%向上。
- 【要点③】承認されれば、初の周術期(perioperative)治療としてMIBCで生存改善を実証したレジメンとなる。
この申請は、第3相試験「KEYNOTE-905(EV-303)」のデータに基づくものである。同試験はメルク、ファイザー、アステラス製薬の共同研究として実施され、シスプラチンベースの化学療法が適応外または拒否したMIBC患者595人を対象に、手術単独とKEYTRUDA+Padcev併用の周術期治療を比較した。
試験結果では、KEYTRUDA+Padcev群が手術単独群に比べ、EFSイベント発生リスクを60%低減(HR=0.40[95% CI:0.28–0.57]、p<0.0001)し、EFS中央値は未到達(NR)だったのに対し、手術単独群では15.7か月(95% CI:10.3–20.5)であった。
また、全生存期間(OS)でも死亡リスクが50%減少(HR=0.50[95% CI:0.33–0.74]、p=0.0002)。病理学的完全奏効率(pCR)は、手術単独群の8.6%からKEYTRUDA+Padcev群で57.1%に上昇した(差48.3ポイント[95% CI:39.5–56.5]、p<0.000001)。
- 発表元→ Merck & Co., Inc.(米国ニュージャージー州ラウェイ)
- 発表日→ 2025年10月23日
- 対象疾患→ 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)
- 試験名→ KEYNOTE-905 / EV-303(第3相試験)
- 比較対象→ 周術期KEYTRUDA+Padcev併用 vs 手術単独
- 主要評価項目→ イベントフリー生存期間(EFS)
- 副次評価項目→ 全生存期間(OS)、病理学的完全奏効率(pCR)
- 結果概要→
- EFSリスク低減:60%(HR=0.40, p<0.0001)
- OSリスク低減:50%(HR=0.50, p=0.0002)
- pCR率:57.1% vs 8.6%(差48.3%ポイント)
- 審査状況→ FDA優先審査中(PDUFA:2026年4月7日)
- 試験共同実施→ メルク、ファイザー、アステラス製薬
- 備考→ 承認されれば、シスプラチン非適応のMIBC患者に対する初の生存改善周術期レジメンとなる見込み。
KEYNOTE-905(EV-303)試験の構成:
・A群:術前KEYTRUDA+術後KEYTRUDA単剤
・B群:手術単独
・C群:術前KEYTRUDA+Padcev併用 → 手術 → 術後KEYTRUDA+Padcev併用 → KEYTRUDA単剤
試験の主目的は、C群とB群のEFS比較。副次的にOSおよびpCRの改善を評価している。
疾患背景: 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)は全膀胱がんの約30%を占め、標準治療はシスプラチンベースの化学療法+根治的膀胱摘除術。だが、約半数の患者は腎機能や併存疾患によりシスプラチン投与が不可能で、治療選択肢が限られている。
AIによる情報のインパクト評価(参考):
★★★★★
この優先審査付与は、膀胱がん治療における免疫療法の拡大を示す重要な進展である。 シスプラチン非適応患者に対して生存改善をもたらす初の周術期免疫レジメンとなる可能性が高く、がん免疫療法の新たな標準治療確立に直結する画期的なステップと評価できる。
参考文献
Merck Press Release: “FDA Grants Priority Review for KEYTRUDA(pembrolizumab) and KEYTRUDA QLEX(pembrolizumab and berahyaluronidase alfa-pmph), Each in Combination with Padcev (enfortumab vedotin-ejfv), for Certain Patients with Muscle-Invasive Bladder Cancer”
https://www.merck.com/news/fda-grants-priority-review-for-keytruda-pembrolizumab-and-keytruda-qlex-pembrolizumab-and-berahyaluronidase-alfa-pmph-each-in-combination-with-padcev-enfortumab-vedotin-ejfv/
出典:Merck公式発表(2025年10月23日)/ESMO Congress 2025発表データ

