PCR検査や抗体検査を新型コロナウイルス感染症のコントロールにいかに生かすかの数理モデル研究。
症状の有無、感染者との接触、検査の実施、自主隔離、検査の精度、自主隔離の効果、医療従事者や濃厚接触者などハイリスク者か否かなどから、再生産数(R)の減少にいかにつなげるかを検討。
症状が出た人がすべて自主隔離するようにして、その人からの感染阻止が100%できると仮定すると再生産数は47%減る。ただ家庭内感染などでこの数値は変わってくる。その上で、PCR検査を行うと自主隔離の必要性を減らせると考えられる。もっとも偽陰性の可能性が10%程度として自主隔離の効果が減ると説明。このほか条件ごとの想定を実施。
そうした中で、対象者を絞る手法として、医療従事者やハイリスク者の1週間ごとの検査を行った場合を想定。自主隔離の効果が最も高く、24時間以内に結果が出る想定であれば、新型コロナウイルスの感染率を23%減らすと説明する。実施する際の工夫についてもシフトの最後に検査をして、次のシフトまでに結果が出るケースなどを想定する。
検査をして接触者の追跡を行うのは、結果ができるだけ短時間に出て、接触者の追跡が効率的に行えるかによる。自主隔離の効果が最も高く、80%の接触者を追跡可能、しかも症状があった場合に即検査を行い24時間以内に自主隔離の条件を想定すると再生産数を26%減らすとする。
研究グループは、医療従事者やハイリスク者の定期的な検査が有効と見る。ただ単一の戦略だけでは再生産数を1未満に減らすことはできないと指摘。抗体検査や感染検査に基づく免疫パスポートの考え方は技術、法的、倫理的な課題もあるとする。
2020年8月英国研究。
Grassly NC, Pons-Salort M, Parker EPK, White PJ, Ferguson NM; Imperial College COVID-19 Response Team. Comparison of molecular testing strategies for COVID-19 control: a mathematical modelling study [published online ahead of print, 2020 Aug 18]. Lancet Infect Dis. 2020;S1473-3099(20)30630-7. doi:10.1016/S1473-3099(20)30630-7