セカンドオピニオンは、私自身10年以上も身近な人と接する中で対応してきたテーマでもありました。簡単な話、セカンドオピニオンをどう取るかという話によく出くわすからです。どう実践すればよいのかという身近に手に入る資料があまりないと感じていました。
実践的なセカンドオピニオン医療本
もちろんリーフレットのようなものはありますが、対応を依頼したときに、医師はじめスタッフからどう反応を受け、患者はどんな立場になりやすく、どのような手間がかかり、タイムラインや費用がどうで、どう医療機関を移るかという細々とした状況を事前に把握できる情報を得づらいのです。
一般的な書籍のラインナップを見ると、貴方のセカンドオピニオン医になりますよ、という医師による資料やセカンドオピニオン業務上の事務的な資料、患者によるセカンドオピニオンを一人称で述べた物はあります。ただ、患者目線でもう少し緻密にセカンドオピニオンの経過をたどった資料がほしいなというところはあります。
著者の金田氏が綴った新作は、セカンドオピニオンを取るときの一人称としての受け止めばかりではなく、第三者である医師や病院の各種のスタッフ、同室の患者のほか、家族、同僚友人といった複眼的な目線を通して描きます。手続きや事務的な対応がどうかといった、実際のところセカンドオピニオンをやろうとしたときの役立てられる情報も細かく記載しているのも、当事者にはありがたいはずだと感じました。過去にそうない本であると思った理由です。
「受けない選択」の理由
タイトルの「がん治療選択」という意味での最大の山場は、セカンドオピニオンで紹介されて手術を一度決意した、神の手とも言える外科医の手術を最終的に「受けない」決断をしたところと思います。それはなぜなのか。
大きな謎がそこにあるのですが、悩みやなぜ生きのか、そして同室の気が触れたようにも見えるOさんなど身近な患者ら、取材先の能楽師である宮内美樹さんの苦闘、主治医や放射線科医、同僚知人などとの交流を通して、治療とはなんのために受けるのか、生きるのは何なのかを問い続けた末に少しずつ結論を出していきます。
そこでどのような思考のプロセスを通って治療を選択していくのかという、人とのやりとりや葛藤がやはり最大の山場になっていくのかと思います。
生きるとは何かというのは、ジャーナリストという「仕事」がやはり大きいのですが、そこも単純ではありません。
この書籍で、家族4人で車に乗るシーンがあるのですが、そこでは親子の思い、絆について自分にも照らして思うところがあります。そこは印象的でした。絆は簡単に切れる物ではありません。生まれた時から通じる思いというのはどんな親子関係が荒んだように見えても強く存在するものです。仕事のためならばリスクを背負って大丈夫という自分自身と、それでも親にはリスクを背負ってもらいたくはないという家族の優しさが対照的に浮かび上がり、感涙を禁じ得ません。
民間療法や風景の描き方も独特でした。ここまで書いていると尽きませんので止めますが、ある意味で医療の人ではない。これがありのままの姿なのかな。へたに医療に忖度するような取材に関わってこなかったからこそ描ける物。それが今回の新作の良さにもつながるのだろうと考えています。(星良孝)