これまで28年間に米国食品医薬品局(FDA)の「迅速承認(accelerated approval)プログラム」により承認された医薬品のうち、半数近くが臨床的利益をまだ確認されていないと判明した。その中には既に20年以上にわたり高額で市販されているものもあるという。
 国際的医学誌『BMJ』が、独自の調査結果として同誌で7月に発表した。

医薬品253種のデータを分析

 1992年に始まったFDAの迅速承認プログラムは、重大な疾患の治療薬に関し、臨床的利益を予想すると考えられる代用エンドポイント(画像検査や臨床検査値などの関節的な指標)に基づいて医学的ニーズを満たす場合に、早期承認を認めるものである。
 代用エンドポイントは患者の機能や生存といった直接的な臨床的利益を示すものではないため、製薬会社は承認後も、臨床的利益を確認する試験(第IV相確認試験)を行う必要があり、確認されない場合は承認が取り消される可能性がある。
 このプログラムをめぐっては、最近アデュカヌマブが認知症治療薬として迅速承認されたことを受けて、批判が再燃している。

 そこでBMJは、1992〜2020年末までにこのプログラムにより承認された医薬品253種についてFDAのデータを詳細に分析。製薬会社にも質問して、臨床的利益の証拠や第IV相試験について調べた。

プログラムの修正が必要

 こうして判明したのは、過去28年間に迅速承認された医薬品253種のうち半数近く(112種)において、臨床的利益が確認されていないことである。このうち24種は5年以上にわたって市販され、20年以上に及ぶものもある上に、往々にして高額であることだ。
 これら24種に関し、第IV相試験について製薬会社に質問したところ、回収や正式承認されていない18種のうち試験の情報が得られたのは6種のみ。うち4種で参加者の募集が始まっていたが、2種は試験の設計についていまだにFDAと協議中という。
 11社は質問に回答しなかった。BMJ誌の記事では、ミドドリンなど数種の医薬品について不透明な第IV相試験の詳細をまとめている。
 迅速承認された医薬品のうち、これまでに市場から回収されたのはわずか16種。大部分は効果がないと証明されたためであったが、家族性大腸腺腫症用途のセレコキシブなど、第IV相試験が行われなかったためというケースもあった。

 重大な疾患の治療薬の早期利用を目指したプログラムであるが、ほとんど利益がなく明らかな害が予想される医薬品が市場に出回っている可能性があるため、今では患者の不利益と医療費の膨張につながっているのではないかと専門家は懸念している。
 米国会計検査院(GAO)や非営利機関の米国臨床経済評価研究所(ICER)も、市販後の安全性データや第IV相試験に対する懸念を表明している。承認決定をめぐる不透明性やエビデンス基準が低すぎるという指摘もある。
 しかし、BMJが話した専門家は、変更が必要とはいえ、やはり有用なプログラムであり、患者の利益になり得るという点で全員一致している。
 そのための改良点として、第IV相試験の設計や実施を承認の一環とすること、代用エンドポイント選択基準の強化、迅速承認された医薬品の価格規制、承認の定期的な見直しや更新が挙げられている。

www.bmj.com

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執筆/編集/審査監修/AI担当

星 良孝(ほし・よしたか)
ステラ・メディックス代表/ 獣医師 ジャーナリスト。日経BP、エムスリーなどに所属し、医療や健康、バイオなどの分野を取材。

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