ギリアド・サイエンシズは、全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(HR-/HER2-)乳がん治療薬として、抗体薬物複合体sacituzumab govitecanについて日本での製造販売承認申請を行った。⇒この治療薬は、トリプルネガティブ乳がんと呼ばれる最も悪性度の高いタイプの乳がんに対する有望な治療選択肢となる。
sacituzumab govitecanとは
sacituzumab govitecanは、Trop-2たんぱくを標的とする抗体薬物複合体(ADC)であり、Trop-2が発現したがん細胞に取り込まれると、トポイソメラーゼI阻害剤であるSN-38を直接届け、がん細胞を死滅させる。この革新的な治療法は、特に治療選択肢が限られているトリプルネガティブ乳がん患者にとって、重要な進歩を意味する。
トリプルネガティブ乳がんの課題
トリプルネガティブ乳がんは、乳がん全体の約10%を占め、エストロゲンとプロゲステロンの受容体の発現がなく、HER2の発現も限定的もしくは全くない。この乳がんは、再発や転移の可能性が高く、有効な治療法が極めて限られているため、患者にとっては大きな治療の課題となっている。
研究背景と臨床試験
今回の承認申請は、海外で実施された第III相試験(ASCENT)および国内第II相臨床試験(ASCENT J-02)の結果に基づいている。これらの試験は、2つ以上の化学療法レジメンによる前治療後に再発した切除不能な局所進行または転移・再発のHR-/HER2-乳がん患者を対象としており、sacituzumab govitecanの有効性と安全性を評価している。