STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、科学技術・医療・ライフサイエンスの分野における研究成果を、中立的かつ正確に紹介するニュースメディアである。最新の臨床試験や薬事承認の情報を多角的な視点から伝えることで、医療の進展を客観的に理解する助けとなることを目指している。今回紹介するのは、米国食品医薬品局(FDA)が承認したアストラゼネカとAmgenによる新たな適応拡大の発表である。
- 【要点①】FDAがテゼペルマブ(商品名テズスパイア)を慢性副鼻腔炎(鼻茸を伴う)に対して承認。
- 【要点②】上皮由来サイトカインTSLPを標的とする初の生物学的製剤として、従来治療で十分な効果が得られない患者への新たな選択肢。
- 【要点③】第3相WAYPOINT試験で、鼻茸の重症度と全身性コルチコステロイド使用の有意な減少を示した。
慢性副鼻腔炎(鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎:CRSwNP)は、鼻腔内の持続的な炎症とポリープ形成を特徴とする疾患であり、呼吸困難や嗅覚障害など生活の質を著しく低下させる。従来の治療としてコルチコステロイドや手術が行われてきたが、再発や難治性の症例も多い。今回、AmgenとAstraZenecaが共同開発したテゼペルマブ(商品名テズスパイア)は、上皮サイトカインである胸腺間質性リンホポイエチン(thymic stromal lymphopoietin:TSLP)を阻害するヒトモノクローナル抗体であり、炎症の上流に作用する点が注目されている。
- 発表元→ AmgenおよびAstraZeneca
- 発表日→ 2025年10月17日
- 対象疾患→ 慢性副鼻腔炎(鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎:CRSwNP)
- 研究の背景→ CRSwNPは推定で世界3億人以上が罹患し、多くの患者で既存治療による長期的な効果が得られない。再発性と難治性が課題であった。
- 試験デザイン→ 第3相WAYPOINT試験。多施設共同・無作為化・二重盲検・プラセボ対照試験。
- 一次エンドポイント→ 鼻茸の重症度(内視鏡によるNasal Polyp Score)および鼻閉スコアの変化(統計学的有意差あり)。
- 二次エンドポイント→ 嗅覚の改善、SNOT-22スコア(疾患特異的QOL指標)の改善、手術・全身性ステロイド使用の減少。
- 主要結果→ プラセボと比較して鼻茸サイズおよび鼻閉スコアが有意に改善し、手術必要性とステロイド使用をほぼ消失させた。
- 安全性→ 主な有害事象はCOVID-19、鼻咽頭炎、上気道感染。安全性プロファイルは重症喘息での既知データと整合。
- 臨床的含意→ 重症喘息に次ぐ2つ目の適応拡大であり、TSLP阻害の臨床的有用性を示す。難治性CRSwNP治療の新たな維持療法として期待される。
- 制限事項→ 試験期間は52週間であり、長期的な有効性・安全性の評価は今後の課題。
- 次のステップ→ 欧州医薬品庁(EMA)、中国、日本を含む複数の地域で承認審査が進行中。
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★☆
CRSwNP領域では、デュピルマブに続く新しい作用機序の生物学的製剤であり、炎症経路の上流を標的とする点で臨床的意義が高い。ただし、長期的な安全性と費用対効果の検証が必要。
参考文献
FDA Approves Tezspire for Chronic Rhinosinusitis with Nasal Polyps
https://www.amgen.com/newsroom/press-releases/2025/10/fda-approves-tezspire-for-chronic-rhinosinusitis-with-nasal-polyps
ClinicalTrials.gov:Efficacy and Safety of Tezepelumab in Participants With Severe Chronic Rhinosinusitis With Nasal Polyposis(WAYPOINT)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04851964
Lipworth BJ, Han JK, et al. Tezepelumab in adults with severe, uncontrolled CRSwNP. N Engl J Med. 2025.
https://www.nejm.org/
