STELLANEWS.LIFE(ステラニュース・ライフ)は、科学技術・医療・ライフサイエンスの分野における研究成果を、中立的かつ正確に紹介するニュースメディアである。ロシュ(Roche)は、ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫(Uveitic Macular Edema:UME)を対象とした第3相試験の結果を発表し、新規抗IL-6抗体療法バミキバルト(vamikibart)の有効性を報告した。今回の記事で伝える情報は次の通り。
- 【要点①】バミキバルトは、炎症性機序を標的とした初の非ステロイド療法候補であり、UMEに対して有意な視力改善効果を示した。
- 【要点②】第3相MEERKAT試験で統計学的有意差、SANDCAT試験で名目的有意差を達成。
- 【要点③】安全性は良好で、治療関連眼内炎や網膜血管閉塞性血管炎は認められなかった。
ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫は、視力低下や失明の主要な原因となる炎症性眼疾患である。現行の標準治療であるステロイドは有効である一方、眼圧上昇や白内障などの副作用を伴う。ロシュが開発中のバミキバルトは、インターロイキン6(IL-6)を標的とするモノクローナル抗体であり、非ステロイド性の局所注射治療薬として期待されている。
- 発表元→ Roche
- 発表日→ 2025年10月17日
- 対象疾患→ ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫(Uveitic Macular Edema:UME)
- 研究の背景→ UMEはぶどう膜炎患者の中で最も頻度の高い視力障害の原因であり、治療の多くが副作用の強いステロイドに依存している。
- 試験デザイン→ 第3相MEERKAT試験およびSANDCAT試験。多施設共同・無作為化・二重盲検・シャム対照試験。0.25mgまたは1mgの硝子体内投与を4週間ごとに実施。
- 一次エンドポイント→ 投与16週時点でベースラインから15文字以上の視力改善を示した被験者割合。
- 主要結果→ ・MEERKAT試験では、1mg群で36.9%、0.25mg群で19.9%が視力改善(p<0.0001、p=0.0008)。
・SANDCAT試験では、統計学的有意には至らなかったが、同様の改善傾向を確認。
・黄斑中心厚(CST)は両試験で平均約190µm減少(p<0.0001)。
・眼内炎や網膜血管炎など重篤な眼有害事象は発生せず。 - 安全性→ 主な副作用は結膜出血および眼圧上昇(発現率5%未満)。重篤な薬剤関連事象は報告なし。
- 臨床的含意→ バミキバルトは非ステロイド局所治療として、UME治療の安全性と利便性を高める可能性がある。
- 制限事項→ SANDCAT試験で一次エンドポイントが統計学的有意に到達しなかったため、さらなる解析と長期評価が必要。
- 次のステップ→ 各国の規制当局との協議を経て承認申請を予定。
AIによる情報のインパクト評価(あくまで参考として受け取ってください):
★★★★☆
非ステロイドの新規IL-6阻害療法として、ステロイド関連副作用の軽減に寄与する可能性があり、眼科領域の治療戦略を拡張する意義が大きい。
参考文献
Roche presents new phase III pivotal data for vamikibart in uveitic macular edema (UME), a serious cause of vision loss
https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2025-10-17b
ClinicalTrials.gov:MEERKAT(NCT05642312)、SANDCAT(NCT05642325)
https://clinicaltrials.gov/study/NCT05642312
https://clinicaltrials.gov/study/NCT05642325
