ブリストルマイヤーズスクイブ社は2023年1月26日、再発・難治性(relapsed or refractory=R/R)の慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)のを対象とした、リソカブタゲンマラルユーセル製剤(商品名ブレヤンジ)の安全性と有効性を検証した非盲検単群多施設共同第1/2相試験であるTRANSCEND CLL 004試験の結果を報告している。今回、特定の条件を満たすCLLに対する効果が確認された。

プレスリリースからこの臨床試験の要点は次のようになるだろう。

リソカブタゲンマラルユーセル製剤は、専門的には、「CD19を標的とするCART細胞療法(キメラ抗原受容体遺伝子改変自家T細胞療法)」と呼び、これは遺伝子操作をした「T細胞」という免疫細胞を活用した治療になる。平たく言うと、特定の種類のがんと体が戦うのを助ける薬の一種で、この薬の最大の特徴は、がん細胞を攻撃の標的とするように作られた免疫細胞を用いていることだ。

今回の薬は「大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)」と呼ばれる血液のがんの成人のうち、一定条件を満たす場合の治療法として米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。その条件は、ほかの治療法に反応しなかった「難治性」、およびがんが再び発生したた「再発」の場合である。この細胞を使った薬は日本を含む他の国でも承認されており、さらに治療の早い段階で役立つか確認する研究が進められている。

TRANSCEND CLL 004試験は、再発または難治性の成人のCLLやSLLといった血液のがんに対しての治療効果を確かめるもの。今回の研究では、「BTK阻害薬に抵抗性でBCL-2阻害薬の治療歴がある再発または難治性CLL患者の事前に規定されたサブセット」において過去の比較対照(ヒストリカルコントロール)と比べ完全奏功率が改善し、主要評価項目を達成したことが確認された。新たな安全性は従来の研究結果と同様だった。

以上が、プレスリリースから読み取れる内容だ。

「BTK阻害薬に抵抗性でBCL-2阻害薬の治療歴がある再発または難治性CLL患者の事前に規定されたサブセット」という点が分かりづらいが、臨床試験について述べた論文を見ると、試験全体では再発または難治性のCLLおよびSLLの成人を対象にし、対象者の条件としてBTK阻害薬の治療に失敗するなどと記述されている。その上で、中でも特にBCL-2阻害薬のベネトクラクスという薬による治療もうまくいかなかった人に絞った追加の分析がサブセットとして規定されている。この事前に決められたサブセット=サブグループにおいて細胞を使った治療の効果を証明できたと言えるのだろう。

細胞を使った治療は、治療費が高額であることで注目されるが、リソカブタゲンマラルユーセルは日本ではブリストルマイヤーズスクイブ社の完全子会社であるセルジーン株式会社から販売されている。薬価決定時の価格は患者1人当たり3411万3655円。利用が増えるにつれて治療の恩恵を受けられる人が増える。一方で、医療費負担についての議論も並行して行われることになるだろう。

参考文献

Siddiqi T, Soumerai JD, Dorritie KA, Stephens DM, Riedell PA, Arnason J, Kipps TJ, Gillenwater HH, Gong L, Yang L, Ogasawara K, Thorpe J, Wierda WG. Phase 1 TRANSCEND CLL 004 study of lisocabtagene maraleucel in patients with relapsed/refractory CLL or SLL. Blood. 2022 Mar 24;139(12):1794-1806. doi: 10.1182/blood.2021011895. PMID: 34699592.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34699592/

Bristol Myers Squibb Announces TRANSCEND CLL 004 Trial of Breyanzi® (lisocabtagene maraleucel) Met Primary Endpoint of Complete Response Rate in Patients with Relapsed or Refractory Chronic Lymphocytic Leukemia
https://investors.bms.com/iframes/press-releases/press-release-details/2023/Bristol-Myers-Squibb-Announces-TRANSCEND-CLL-004-Trial-of-Breyanzi-lisocabtagene-maraleucel-Met-Primary-Endpoint-of-Complete-Response-Rate-in-Patients-with-Relapsed-or-Refractory-Chronic-Lymphocytic-Leukemia/default.aspx

再生医療等製品の保険償還価格の算定についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000777799.pdf

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執筆/編集/審査監修/AI担当

星 良孝(ほし・よしたか)
ステラ・メディックス代表/ 獣医師 ジャーナリスト。日経BP、エムスリーなどに所属し、医療や健康、バイオなどの分野を取材。

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